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西日本新聞に弾き語り慰問ライブが掲載されました。

「白衣脱ぎ介護施設で弾き語り」 朝日野総合病院院長補佐 阿曽沼克弘さん(60)

認知症患者の笑顔引き出す

毎週木曜の午後になると、ハンチングをかぶり、ギターを抱えて熊本市周辺の介護福祉施設に出掛ける。

今夏、益城町の特別養護老人ホームでは小さなステージと、約40脚のパイプ椅子を並べた客席が設けられ、簡易ミニホールが出現。

お年寄りで客席が埋まると、ステージに現れ客席を見渡し、ポロロン・・・。

ギターの調弦を済ませると「さあご一緒に」と呼び掛けた。

「星影のワルツ」、「リンゴの唄」、「愛燦燦」、「知床旅情」-昭和歌謡をギターで弾き語ると、お年寄りたちが笑顔で反応する。歌声に合わせて手拍子を取ったり、一緒に口ずさんだり・・・。

いつの間にか、会場にお年寄りたちの大合唱が響く。

「次は『津軽海峡冬景色』やって」。リクエストの越えも飛び交う。

お年寄りたちの大半は認知症やその疑いのある人。しかし、歌声に聞き入る表情は健康そのものだ。

「懐かしい歌に重ねるのは、それぞれの青春時代。認知症になっても一番輝いていた時期を思い出せば、表情は必ず生き生きする」と語り、柔らかくほほえんだ。

素顔は診療歴約35年の外科医。昨年から熊本市北区の朝日野総合病院で勤務する。救急外来や当直などもこなし、医師として慌ただしい毎日を送っている。

京大医学部を卒業後、同大病院で肝臓移植を専門的に研究し、2002年から熊本大医学部准教授として同大病院へ。

手術や研究に明け暮れ、特任教授までなったが、57歳の時に、転機が訪れた。

県内のある病院で当直勤務中に、病室のベッドで横になった4人のお年寄りが目に留まった。全員が食事を自力でできず、鼻や体につながったチューブで栄養を摂取。言葉はなく、静かに天井を見つめたまま。一時も目が離せない。

「患者本人が本当に望む医療とは何か」。自問自答を続けるうち、1冊の本と出会った。

特別養護老人ホームの常勤医が、介護現場の視点で高齢者医療の在り方を提言する「『平穏死』のすすめ」。早速、著者に連絡を取り、兵庫県の特養老人ホームの嘱託医として働くことになった。

「2ヶ月半、住み込みで働いた。施設入所者の約8割は認知症患者。最初は戸惑ったが、同僚医師の助言は『患者と同じ目線で、軽いスキンシップを交えながら笑顔で接すればいい』とだけ。しかし、あれこれ話題を探しながら対話を重ねると、患者は穏やかな表情で反応するように。医師として手応えを感じた」

延命治療の一方で重視されるのは患者とのコミュニケーション。「高齢者医療は、メスを握り、投薬する行為だけではない。患者に余生を楽しんでもらう生活面でのケア探しも重要だ」。そして自前のギターを手に取った。

”住み込み”を終え、昨年から現在の民間病院へ。今も外科医を務めるが、高齢者医療の研究も続け、講演活動にも取り組むように。ギター弾き語りはその一環でもある。

「認知症患者の笑顔を誘う歌の力はすごい。その笑顔を突破口に、患者に必要なケアを一つ一つ探せたらいい」

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